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ヒートショックに注意!冬の心臓病リスクと命を守る生活習慣とは

[2025.12.03]

寒さが本格的になり、冬の到来を感じる季節となりました。この時期になると、心臓に関する病気で救急搬送される方が急増することをご存知でしょうか。

特に「心筋梗塞(しんきんこうそく)」と「心不全」は、冬に注意が必要な代表的な心臓疾患です。どちらも命に関わる重大な病気ですが、その特徴や症状は異なります。

今回は、なぜ冬に心臓病が増えるのか、心筋梗塞と心不全の違い、そして今日からできる予防法について分かりやすく解説します。


なぜ冬は危険?寒さが引き起こす血管の変化と「ヒートショック」

冬になると心臓病による救急搬送が増える背景には、気温の低下が深く関係しています。
私たちの体は寒さを感じると、体温を外に逃がさないように反応します。
その際、全身の血管がぎゅっと縮まります(これを「血管収縮」といいます)。

血管が細くなると、血液が流れにくくなり、それを押し流すために血圧が上昇します。
この冬場特有の血圧上昇が、血液を送り出すポンプの役割をしている心臓にとって、大きな負担となるのです。

特に注意が必要なのが、急激な温度変化によって血圧が乱高下する「ヒートショック」という現象です。

例えば、暖房の効いた温かいリビングから、ひんやりとした脱衣所やトイレに移動したときを想像してください。

体は急な寒さに対応するため血管を急激に縮め、血圧が一気に上がります。
その後、熱いお風呂に浸かると、今度は血管が広がって血圧が急激に下がります。
このような短時間での激しい血圧変動は、心臓や血管に強いストレスを与えます。
その結果、心臓の血管が詰まる「心筋梗塞」や、心臓の働きが限界に達して「心不全」を引き起こす引き金になってしまうのです。

特に、もともと血圧が高い方や、動脈硬化(血管が硬くなって詰まりやすくなる状態)が進んでいる高齢の方はリスクが高いため、十分な注意が必要です。

心筋梗塞と心不全の違い|それぞれの症状と見逃せないサイン

心筋梗塞と心不全は、どちらも冬に多い心臓の病気ですが、発症の仕方や症状に違いがあります。

まず「心筋梗塞」について説明します。

 

心臓は筋肉でできており、その筋肉自体に酸素や栄養を送るための「冠動脈(かんどうみゃく)」という血管があります。

心筋梗塞は、この冠動脈が動脈硬化などで突然詰まってしまい、血液が流れなくなって心臓の筋肉の一部が壊死してしまう(死んでしまう)病気です。

典型的な症状は、突然起こる激しい胸の痛みや圧迫感です。
「胸を強く締め付けられるような」「焼けるような」と表現されることが多く、この痛みが15分以上続きます。また、冷や汗や吐き気を伴ったり、痛みが左肩、背中、顎(あご)などに広がる「放散痛(ほうさんつう)」が現れることもあります。
これは一刻を争う緊急事態ですので、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。

一方、「心不全」とは、病名ではなく心臓の状態を表す言葉です。

何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなってしまった状態を指します。
心筋梗塞がきっかけで起こることもあれば、長年の高血圧などが原因で徐々に進行することもあります。

心不全の主な症状は「息切れ」と「むくみ」です。階段の上り下りや坂道で息が切れやすくなったり、夜横になると息苦しいが体を起こすと楽になる、といった症状が特徴です。
また、血液の流れが滞るため水分が体にたまり、特に足のすねや甲がむくみやすくなります。

指で押してもへこんだまま戻らないようなむくみや、数日で体重が2〜3キロ急増した場合は注意が必要です。

高齢者や糖尿病の方では、典型的な胸痛を感じにくく、「なんとなく元気がくい」「食欲がない」といった症状だけのこともあるため、普段と違う様子があれば医療機関に相談してください。

 

命を守る冬の習慣!今すぐ始めたい具体的な予防法

冬の心臓病を予防するためには、日常生活の中で心臓への負担を減らす工夫が不可欠です。
今日から始められる具体的な予防法をご紹介します。

まず最も重要なのは、「温度差を小さくする」ことです。

前述したヒートショックを防ぐため、家の中の温度差をできるだけ少なくしましょう。
特に冷え込みやすい脱衣所やトイレには、小さな暖房器具を置いて、使用前に温めておくことを強くおすすめします。

入浴時も注意が必要です。お湯の温度は41度以下の少しぬるめに設定し、長湯は避けましょう。
かけ湯で体を慣らしてから入る、浴室をシャワーの蒸気で温めておくなどの対策も有効です。

次に大切なのが「血圧と食事の管理」です。

冬は血圧が上がりやすい季節ですので、高血圧の傾向がある方は、家庭で毎日決まった時間に血圧を測定する習慣をつけてください。

もし、収縮期血圧(上の血圧)が135以上、拡張期血圧(下の血圧)が85以上の日が続く場合は、かかりつけ医に相談しましょう。

食事では塩分の摂りすぎに注意が必要です。

温かい汁物や鍋料理は冬場にはいっそうおいしく感じられますが、つゆを飲み干すと塩分過多になり、血圧上昇の原因となります。1日の塩分摂取量は6グラム未満を目標にし、薄味を心がけましょう。

また、冬は寒さで運動不足になりがちですが、適度な運動は血管を健康に保ちます。

天気の良い日中に散歩をしたり、屋内でストレッチをするなど、無理のない範囲で体を動かしましょう。

そして、忘年会や新年会などでお酒を飲む機会も増えますが、過度な飲酒は不整脈や血圧上昇を招きますので、適量を守り休肝日を設けることが大切です。
喫煙習慣のある方は、タバコが血管を収縮させ動脈硬化を進行させる最大の要因となりますので、禁煙を強く推奨します。

冬は心臓にとって過酷な季節ですが、正しい知識を持ち、日々の生活で対策を行うことでリスクを大幅に減らすことができます。

少しでも胸の違和感、息切れ、動悸(どうき)などを感じた場合は、我慢せずに早めに医療機関を受診してください。

早期発見と適切な治療が、あなたの心臓と命を守る鍵となります。

適切な生活習慣で寒い冬を乗り切りましょう。

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